妻帯者には恐怖でしかない【赤い長靴】 [書籍にドロップキック!!]
■ヒトコト感想
結婚して10年目、子なしの夫婦の物語。経済的にも恵まれた環境で、何不自由なく暮らす二人。基本は妻である日和子目線での物語りなのだが、これが思わぬ恐ろしさをかもし出している。内容は平和でほのぼのとしたモノのはずが、恐ろしい。それは、恐らく妻帯者だけが感じる恐怖だろう。夫のことを愛してはいるが、気に入らない部分が多々ある妻。それは日々の生活の中で、些細なことかもしれないが、積み重なった不満がいつ爆発するのかという恐怖がつきまとう。日和子の問いかけに生返事をしたり、一度に二つの質問をするのは厳禁だったり、服を脱ぎっぱなしにしたり。些細なことにイラつく日和子の心情描写を読んでいると、自分の妻も、もしかして…と思ってしまう。
■ストーリー
「私と別れても、逍ちゃんはきっと大丈夫ね」そう言って日和子は笑う、くすくすと。笑うことと泣くことは似ているから。結婚して十年、子供はいない。繊細で透明な文体が切り取る夫婦の情景―幸福と呼びたいような静かな日常、ふいによぎる影。何かが起こる予感をはらみつつ、かぎりなく美しく、少し怖い十四の物語が展開する。
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