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作者の実体験のような物語 【一人称単数】 [書籍にドロップキック!!]


一人称単数 (文春e-book)

一人称単数 (文春e-book)

  • 作者: 村上 春樹
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2020/07/18
  • メディア: Kindle版

■ヒトコト感想
村上春樹の短編集。すべては創作ということを理解はしているが、どうしても作者のプライベートエッセイのような雰囲気を感じてしまう。特に昔付き合った背の小さな女性の兄との交流の物語は強烈だ。その後、その女の子とは別れたが、何年後かに兄と再会する。そして、ちょっとお茶をして、元カノが実は自殺したと知る。独特な語り口で淡々と語られると、すべてが作者の過去の出来事のように思えてくる。

「品川猿の告白」は、さすがに旅館に行くと話しをするサルがでてきて背中を流してくれたり、一緒に酒を飲んだりする物語なので、まるっきり創作だとわかる。ただ、それまでの作品を読んでいると作者の実体験が多少なりとも含まれているような気がしてならない。

■ストーリー
「一人称単数」とは世界のひとかけらを切り取る「単眼」のことだ。しかしその切り口が増えていけばいくほど、「単眼」はきりなく絡み合った「複眼」となる。そしてそこでは、私はもう私でなくなり、僕はもう僕でなくなっていく。そして、そう、あなたはもうあなたでなくなっていく。そこで何が起こり、何が起こらなかったのか? 「一人称単数」の世界にようこそ。






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